淡いアースカラーの円が重なり合う背景に、「親を介護施設に入れるタイミングは?感情の葛藤を乗り越え、具体的な一歩を踏み出すための温かい案内書」「介護の限界を感じているご家族へ」と書かれたタイトルスライドの画像。

親の介護

親を介護施設に入れるタイミング|実家での介護に限界を感じた私の判断

こんにちは。人生整理ノート管理人の「えいじ」です。

親を介護施設に入れるタイミングは、本当に難しい判断です。

「まだ家で見られるんじゃないか」「施設に入れるなんて、申し訳ない」「住み慣れた家を離れさせていいのか」——介護をしていると、こんな気持ちが何度も頭をよぎります。

私の母は心臓病を抱えていて、少しずつ体が弱っていきました。最初は何とか実家で生活できていましたが、やがて入浴も難しくなり、ほとんど寝たきりに近い状態になっていきました。

そのころから「このまま家で介護を続けることが、本当に母のためになっているのだろうか」と考えるようになりました。

同時に、私自身も無職のまま介護を続けることへの限界を感じていました。

この記事では、私が施設入所を考え始めたきっかけと正直な気持ちをベースに、客観的な判断基準、施設の選び方、費用と制度、手続きの流れまでをひとまとめに書いています。

今まさに悩んでいる方の、少しでも実際の手がかりになればうれしいです。

なお、要介護度や利用できる制度、施設の受け入れ条件は、本人の状態・自治体・施設種別・所得や資産状況によって異なります。

この記事は一般的な判断材料として活用し、実際の手続きではケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口にご確認ください。

相談先の選び方に迷う場合は、親の介護はどこに相談する?最初に行った相談窓口と介護認定までの流れでも、私が最初に相談した窓口を整理しています。

私が施設を考え始めたきっかけ

私が施設入所を本格的に考え始めたのは、母が入浴できなくなり、寝ている時間が大半になった頃でした。

それまでも体は少しずつ弱っていました。一人で外出するのが難しくなり、日常の動作に部分的な介助が必要になっていました。

それでも何とか実家で暮らしていました。でも入浴となると話が変わります。浴室は滑りやすく、服を脱ぐ・体を洗う・浴槽をまたぐ・立ち上がるという一連の動作のどこにも転倒の危険がある。

母の体力が落ちていくにつれ「家でこのまま続けられるのか」という不安がどんどん大きくなっていきました。

デイサービスにも週2回通っていて、そこで入浴をしていました。しかし、デイサービスから帰ってくる度にひどく疲れていました。

寝たきりに近くなると、体を動かす機会も自然と減ります。「このままだと余計に体に悪いのではないか」という気持ちも重なっていきました。

一方で、施設ならリハビリの機会がある、他の入居者や職員の方と話す機会もある、プロの目が24時間そばにある。「家にいること」と「安全でいること」は、必ずしも同じではないと気づいたのはこの頃です。

深緑の背景に「『家にいること』と『安全でいること』は、必ずしも同じではりません。施設を選ぶことは、親を見捨てることではなく、『プロの目による24時間の安全』を選ぶという前向きな決断です。」というメッセージと、光が差し込む開いたドアのイラストが描かれたスライド。

施設入居を考え始める「客観的なサイン」

私の経験は一例ですが、施設入居を考え始めるタイミングには、ある程度共通したサインがあります。大きく分けると、①本人の日常生活動作の低下、②認知機能の問題、③介護する家族の限界、の3つです。

日常生活動作(ADL)の低下

食事・排泄・入浴・着替え・移動といった基本動作が難しくなってきたとき、在宅介護のリスクは急速に高まります。

「食事(むせることが増えた・忘れる)→誤嚥・低栄養・脱水」「入浴(ふらつく・嫌がる)→転倒・感染症」「排泄(間に合わない・処理できない)→衛生悪化・皮膚トラブル」「移動(室内で転ぶ・夜間ふらつく)→骨折・頭部外傷」という4つの低下と危険性をまとめたスライド。

生活場面 気になるサイン 放置したときのリスク
食事 食べる量が減った、むせる、食事を忘れる 低栄養・誤嚥・脱水
排泄 トイレに間に合わない、処理ができない 衛生悪化・皮膚トラブル
入浴 入浴を嫌がる、浴室でふらつく、長期間入れていない 転倒・感染症・皮膚疾患
移動 室内で転ぶ、夜間トイレでふらつく 骨折・頭部外傷
家事 火の消し忘れ、水道の閉め忘れ、薬の飲み忘れ 火災・服薬事故
清潔保持 着替えない、部屋が不衛生になる 健康悪化・近隣トラブル

特に、転倒・火の不始末・服薬ミス・脱水が繰り返されている場合は、「まだ家で見られるか」ではなく、「このまま自宅にいることが本人にとって安全か」という視点で考える必要があります。

認知機能の低下

認知症や認知機能の低下がある場合、身体は元気でも在宅介護の難易度は一気に上がります。

歩けるからこそ外へ出て迷子になる、火を使えてしまうからこそ火災リスクがある——「元気だから安全」とは限りません。

「身体は元気で歩ける + 認知機能の低下 = 在宅介護のリスク急増」という数式形式の表現と、火の消し忘れや夜間の外出(徘徊)などの兆候があれば要介護度が低くても相談を始める目安であることを説明したスライド。

以下は、施設入居を「いつか考える」ではなく「相談を始める」目安として活用してください。要介護度の自己判定表ではありません。

分類 気になるサイン 家族が取るべき行動の目安
記憶 同じ話を何度もする、直前の会話を忘れる、物を探し続ける 物忘れ外来・地域包括支援センターへ相談
見当識 今日の日付が分からない、季節に合わない服装、今いる場所が分からない 認知症の評価・見守り体制の検討
判断力 ガス・水道の異常に対応できない、詐欺・不要契約を断れない 火災対策・金銭管理の見直し
行動 夜間に外へ出ようとする、迷子になる、怒りっぽくなる、妄想がある 在宅介護だけで対応できるか見直す
服薬管理 薬を飲み忘れる、重複して飲む 訪問看護・施設入居を含めて検討

複数当てはまる場合は、まず地域包括支援センターに相談しましょう。すでに要介護認定を受けている場合でも、状態が悪化しているなら区分変更申請を検討できます。

今すぐ動くべき「危険サイン」

ガスコンロの消し忘れ、室内の繰り返す転倒、外出して帰れない、薬の大量服薬、家族が夜も眠れず限界、など「ひとつでも当てはまる場合、今すぐ見学や申し込みを始める段階です」と警告の鈴のイラストと共に書かれたチェックリストのスライド。

以下のような状態があれば、「いつか考える」段階ではなく、具体的に見学や申し込みを始める段階です。

危険サイン 具体例
火災リスク ガスコンロの消し忘れ、鍋を焦がす、暖房器具の誤使用
転倒リスク 室内で何度も転ぶ、夜間トイレでふらつく、骨折歴がある
徘徊・迷子 外出して帰れない、警察や近所に保護されたことがある
服薬事故 薬を大量に飲んだ、飲み忘れが続く
衛生悪化 排泄物の処理ができない、入浴拒否が続く
栄養・水分不足 食事を取らない、冷蔵庫の管理ができない、脱水を起こした
家族の限界 介護者が眠れない、仕事に支障が出ている

介護者(家族)の限界も、立派な理由になる

私が施設を選んだもうひとつの理由は、正直に言えば、私自身の限界でした。早期退職して実家に戻り、収入のない状態で介護を続けることには、体力的にも精神的にも、そして経済的にも無理がありました。

これは、親を大切に思っていないからではありません。介護する側が倒れてしまえば、介護そのものが続かなくなります。

在宅介護で特に深刻なのが、夜間対応による睡眠不足です。夜中に何度もトイレへ付き合う、転倒しそうになる、昼夜逆転で眠らない——こうした状態が続くと、介護者の心身に深刻な影響が出てきます。

天秤のイラストで、左側の軽い「家で看たいという思い」に対して、右側の重い「夜間対応による睡眠不足」「仕事への支障」「慢性的な疲労と精神的抑うつ」が傾いている様子を描き、「家族の限界は、施設を考える立派な理由です」と示したスライド。

影響の種類 具体的な変化
身体面 慢性的な疲労、頭痛、胃痛、免疫力低下
精神面 イライラ、抑うつ感、涙もろさ、無気力
仕事面 遅刻・欠勤・ミスの増加、集中力低下
家庭面 家族間の衝突、孤立感、介護される親への怒り

また、「要介護度が低い=在宅で大丈夫」とは限りません。身体は比較的元気でも、認知症による徘徊や火の不始末がある場合、家族は常に目を離せません。

要介護度の数字だけでなく、1日に何回介助しているか、夜間に何回起こされているか、外出や仕事に支障が出ていないか——こうした実質的な負担を確認することが大切です。

「仕事を辞めれば時間が作れる」と考える方もいますが、介護離職は慎重に判断すべきです。収入が減り、社会との接点がなくなり、介護だけの生活になると精神的に追い詰められやすくなります。

私自身の早期退職と介護の経緯は、親の介護で58歳早期退職。実家へ戻った私が相続・実家じまいまで経験したことにも書いています。

介護休業・介護休暇・ショートステイ・ケアマネジャーへの相談など、仕事を続けながら介護体制を組み替える方法を先に探しましょう。

介護休業や介護休暇などの制度は、まず公的情報で概要を確認しておくと安心です(出典:厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために」)。

在宅サービスを使い切っても限界があるとき

施設入居を考える前に、在宅介護サービスを最大限に活用することは大切です。デイサービスとショートステイを組み合わせれば、介護者が休む時間を確保しやすくなります。

サービス分類 主なサービス できること 限界・注意点
訪問型 訪問介護・訪問看護・訪問リハビリ・訪問入浴 自宅で身体介助・生活支援・医療的ケア 利用時間外は家族や本人だけで対応が必要
通所型 デイサービス・デイケア 食事・入浴・機能訓練・交流の機会 夜間や休日の見守りは別途必要
宿泊型 ショートステイ 家族の休息・緊急時の一時宿泊 連続利用日数や空き状況に制限がある
複合型 小規模多機能型居宅介護 通い・訪問・泊まりを柔軟に組み合わせ 登録制で地域や空き状況に左右される
環境整備 福祉用具レンタル・住宅改修 手すり設置・段差解消で自宅生活を支える 住宅改修には事前申請が必要

ただし、在宅サービスは24時間365日、常に誰かがそばにいる仕組みではありません。次のような状態になったら、在宅サービスを増やすだけでは根本的な解決にならないことがあります。

24時間の時計のイラストで、デイサービスや訪問介護以外の大部分が「家族が対応する時間」であることを視覚的に示し、夜間の排泄介助やワンオペ状態の徘徊は防げないため、根本的な見直しが必要であることを説明したスライド

  • 夜間の排泄介助や徘徊が毎日のようにある
  • ショートステイから戻るとすぐ家族が疲弊する
  • 介護保険の利用限度額を超えるほどサービスが必要になっている
  • 独居の親が外出して迷子になる
  • 医療的ケアや看取りへの備えが必要になってきた

迷った気持ちと、それでも決めた理由

頭で「必要な判断だ」と分かっていても、気持ちがすぐに納得するわけではありませんでした。

母は長年その家で暮らしてきました。家の空気、部屋の配置、近所の雰囲気——それらはすべて母にとって安心できるものだったと思います。

だから「本当は家にいたいのではないか」「自分がもっと頑張れば施設に入れなくてもよかったのではないか」という気持ちは、決断した後もなかなか消えませんでした。

費用の不安も大きかったです。施設は入れば終わりではなく、毎月費用がかかり続けます。

医療費や日用品も含めると母の年金だけでは足りないと感じ、最終的には実家の売却資金を介護費用に充てることを考えました。

ただ、実家が売れるかどうか、いくらで売れるかは、施設入所を決めた時点ではまだ分からない状態でした。その精神的な重さは、今思い返してもかなりきつかったです。

それでも決めた理由を一言で言えば、「このまま家にいることが、母にとって本当に安全かどうか」への答えが出てしまったからです。

施設を選ぶことは逃げではなく、介護を現実的に続けるための判断だと思っています。

親が施設入居を拒否したときの向き合い方

施設入居を提案すると、親が強く拒否することは珍しくありません。「私はまだ大丈夫」「老人ホームなんて嫌だ」「追い出すつもりか」——そうした言葉が返ってくると、家族は傷つきます。

でも、拒否の裏側には恐怖・不安・寂しさ・プライドがあります。

避けたい言い方は、「もう限界だから施設に入って」「一人で暮らせるわけないでしょ」といった正論で追い詰めるパターンです。

事実でも、親の防衛心が強くなるだけです。「買い物に行くだけ」と嘘をついて施設へ連れていく方法も、その後の信頼関係を大きく損ないます。

代わりに効果的なのは、「あなたが危ないから」ではなく、「私たちが心配している」「これからも安心していてほしい」という伝え方です。

「お母さんがこの家で頑張って暮らしてきたことは、本当に分かっているよ。ただ最近、仕事中にも『転んでいないかな』『火を消し忘れていないかな』と心配になることが増えてきたんだ。

いきなり決めるのではなく、まずは見学だけ一緒に行ってみない?」

こうした小さなステップに分けることも大切です。

川の流れのようなステップのイラストで、第一歩「私たちが心配している」と伝える、第二歩「見学」や「食事体験」として誘う、第三歩「本人の希望」を聞き選ぶ余地を残す、第四歩「ショートステイ」から小さく始める、という順序を解説したスライド。

ステップ 内容
まず家族だけで地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する
親には「施設に入る」ではなく「見学」「食事体験」と伝える
本人の希望を聞く(個室がいい、食事がおいしい所がいい、など)
複数の施設を比較し、本人が選ぶ余地を残す
ショートステイや体験入居から始める
入居後も面会や電話を続けることを事前に伝える

「自分で選んだ」という感覚を残すことが、入居後の不満や帰宅願望を和らげることにつながります。

誰に相談したか

施設入所の判断を一人で抱えるのは無理でした。私が相談したのは、主に次の人たちです。

ケアマネジャー——母の状態を一番よく知っている専門職です。在宅介護を続けるために何が必要か、施設を考えるならどんな選択肢があるかを一緒に考えてもらえました。

施設探しの最初の候補を知るうえでも、紹介してもらえたことは大きな助けになりました。地域の施設情報を持っていることが多く、最初の相談先として最適だと思います。

担当医師・訪問看護師——心臓病を抱えていた母にとって、医療面の状態は施設選びにも直結していました。

在宅介護を続けた場合のリスク、施設でのリハビリの必要性など、医療・看護の視点から話を聞いたことで、家族だけでは見えていなかった部分が見えてきました。

訪問看護師は実際の母の生活に近いところを見てくれていたので、特に心強かったです。

妹・妻——施設入所は、親の生活だけでなく、費用負担や実家の処遇にも関わる家族全体の問題です。大きな判断を自分だけで抱えると、後で家族関係に影響することを私は身をもって学んでいました。

大きな判断ほど、周りに相談して進めることが大事です。

介護施設の種類と選び方

介護施設といっても、種類によって費用・入居条件・ケアの内容が大きく異なります。ケアマネジャーに相談しながら、本人の状態に合った施設を選びましょう。

縦軸に「費用の安さ・公的性質」、横軸に「医療的ケアの必要性」をとった4象限のマトリクス図。グループホーム、特養、老健・介護医療院、有料老人ホーム・サ高住の特徴がシンプルにマッピングされているスライド。

施設の種類 特徴 向いている人
特別養護老人ホーム(特養) 公的性格が強く費用を抑えやすい。原則として要介護3以上が新規入所の目安 常時介護が必要で費用を抑えたい人
介護老人保健施設(老健) 在宅復帰を目指す中間施設。医療・リハビリ色が比較的強い 退院後すぐ自宅に戻るのが難しい人
介護医療院 長期療養と介護を一体的に提供 医療的ケアが必要な人
介護付き有料老人ホーム 施設職員が介護サービスを提供する特定施設。24時間体制 24時間の見守りや施設内介護を重視する人
住宅型有料老人ホーム 住まいに外部の介護サービスを組み合わせる 必要なサービスを選びたい人
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 安否確認・生活相談がある高齢者向け賃貸住宅 比較的自立度が高く、自由度を重視する人
グループホーム 認知症の人が少人数で共同生活する施設 認知症があり、家庭的な環境で暮らしたい人

特養は費用面で魅力がありますが、地域によっては待機期間が長くなることがあります。有料老人ホームやサ高住は選択肢が多い反面、費用やサービス内容の差が大きいため、契約前の確認が特に重要です。

見学時に確認したいポイント

パンフレットやウェブサイトだけでは、実際の雰囲気やケアの質は分かりません。必ず見学し、できれば複数の施設を比較しましょう。

入居者の表情——共有スペースにいる入居者の表情・服装・髪型を見ます。穏やかか、放置されている印象がないかを確認。

スタッフの対応——見学者だけでなく、入居者に対して丁寧に接しているかを見ます。職員同士の言葉遣いや雰囲気も重要です。

清潔感とにおい——施設の新しさより、清掃が行き届いているかが大切。水回り、廊下、居室周辺のにおいを確認します。

夜間体制——夜間に何人の職員がいるか、ナースコールへの対応時間、急変時の連絡先を必ず確認しましょう。

退去条件——「どのような状態になったら退去が必要か」は契約前に必ず確認します。医療依存度が上がった場合、認知症症状が強くなった場合、長期入院した場合の扱いを把握しておきましょう。

医療・看取り対応——胃ろう、インスリン、看取りなど、将来的に必要になる可能性があるケアへの対応も確認しておくと、後で施設を移らずに済む可能性が高まります。

施設入居の手続きの流れ

約1〜2か月のタイムライン。第一段階:情報収集・相談、第二段階:施設見学、第三段階:書類準備、第四段階:本人面談・審査、第五段階:契約、第六段階:引っ越し、という6つのステップを左右に並べたプログレスバー形式のスライド。

希望施設が見つかっても、すぐに入居できるとは限りません。スムーズに進んでも数週間、通常は1〜2か月程度を見込んでおくと安心です。

① 情報収集・相談
地域包括支援センター、ケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカーに相談します。本人の状態・予算・希望エリア・医療的ケアの必要性を事前に整理しておくとスムーズです。

② 施設見学
複数の施設を比較します。本人が見学できる状態なら、できるだけ一緒に行くのが理想です。私は5施設、母親、妹と一緒に見学しました。施設毎に特徴があるので本人が見学することで、後の話がスムーズになります。

③ 入居申し込み・書類準備
一般的に必要な書類は、介護保険証・健康保険証・負担割合証・診療情報提供書・服薬情報・ケアプランなどです。診療情報提供書は作成に1〜2週間かかることがあるため、早めに準備しましょう。

④ 本人面談・入居審査
施設の相談員や看護師が、身体状態・認知症の有無・医療的ケアの必要性などを確認します。医療依存度が高い場合、受け入れ不可となることもあります。

⑤ 契約・重要事項説明
特に確認すべきは、入居一時金の償却期間と返還計算、退去条件、看取り対応、夜間の体制です。「90日以内なら全額返金」と単純に考えるのではなく、実際の控除項目を契約書で確認してください。

⑥ 引っ越し・生活開始
入居時は本人が安心できるものを持参しましょう。家族写真、いつも使っていた湯のみ、なじみの毛布など。

認知症がある場合は、本人の生活歴・好きな食べ物・落ち着く声かけなどを施設スタッフに伝えておくと、ケアがスムーズになります。

費用の不安と使える制度

費用の不安は、施設入居を考えるうえで避けて通れません。私も、母の年金だけでは足りないと感じ、最終的には実家売却の資金を介護費用に充てることを決めました。

ただ、公的制度を活用することで、負担を減らせる場合もあります。

利用者負担や補足給付、高額介護サービス費などの基本は、公的な解説も合わせて確認してください(出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」)。

制度 概要 注意点
特定入所者介護サービス費(補足給付) 介護保険施設の食費・居住費を軽減する制度 住民税非課税世帯・資産要件あり。配偶者の所得も関係する
高額介護サービス費 月の自己負担が上限を超えた場合に超過分が払い戻される 食費・居住費・日用品費などは対象外
高額医療・高額介護合算療養費 医療保険と介護保険の自己負担合計が高額の場合に軽減 年単位での計算
生活保護・介護扶助 資産・収入が最低生活費に満たない場合の介護費用支援 福祉事務所への相談が必要。入居できる施設に制限がある場合も

「世帯分離をすれば費用が安くなる」という情報を見かけることがありますが、安易に手続きするのは危険です。

補足給付では世帯を分けていても配偶者の所得が判定に含まれる場合があり、税・健康保険・扶養にも影響します。

市区町村の介護保険窓口や専門家に確認してから判断しましょう。

実家売却や不動産活用を考える場合

親が持ち家に住んでいる場合、施設入居後にその家をどうするかも重要な問題です。

年金と貯蓄を施設費用に充てる図と、実家を「売却」「賃貸」「リバースモーゲージ」する選択肢のイラスト。下部に「認知症が進み契約内容が理解できない状態になると実家を売却できなくなるため早めの相談が必須」と強調されたスライド。

方法 内容 注意点
売却 実家を売って施設費用に充てる 名義人・相続人・判断能力の問題を確認
賃貸 実家を貸して家賃収入を得る 修繕費・管理費・空室リスクがある
リバースモーゲージ 自宅を担保に資金を借りる 年齢・物件評価・相続人の同意・金利上昇リスクを確認
家族信託・成年後見制度 認知症等で本人が契約できない場合の資産管理 専門家への相談が必要

特に注意したいのは、認知症が進んで本人が契約内容を理解できない状態になると、家族であっても勝手に不動産を売却することができなくなる点です。

将来的な売却や賃貸を考えているなら、早めに家族で話し合い、必要に応じて司法書士・弁護士・地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

施設に入った後の正直な気持ち

母が実際に施設に入ってから、安心した気持ちは確かにありました。介護スタッフが見てくれる、リハビリの機会がある、急な変化にも気づいてもらえる。

在宅介護では常にあった「今何かあったらどうしよう」という不安が、少し和らぎました。

2つの円が重なるベン図。緑の円には「プロが見てくれる深い安心感」、赤の円には「面会で家に帰りたいと言われたときの胸の痛みや罪悪感」が書かれており、決断の後も気持ちが揺れるのはごく自然なことだと伝えるスライド。

でも、申し訳ない気持ちも残りました。面会に行くと、母が「家に帰りたい」と話すことがありました。施設を家と間違っているように見えることもありました。

そういう姿を見るとやはり胸が痛くなって、「本当にこれでよかったのか」と何度も自問しました。

施設に入れる判断は、決めた後も気持ちが揺れます。それは自然なことだと思います。入居直後に「帰りたい」「寂しい」と言うことは珍しくなく、新しい環境に慣れるまで時間がかかるのは自然なことです。

ただ、本人の表情が明らかに沈んでいる、食事を取らない、スタッフへの不信が強い、虐待が疑われるといった場合は、施設の相談員やケアマネジャーにすぐ相談してください。

入居後も家族にできることはたくさんあります。

定期的な面会、電話・ビデオ通話、居室に家族写真や好きな置物を置く、施設スタッフに本人の好みや生活歴を伝える——食事・排泄・入浴は専門職に任せ、家族は親の心を支える役割に集中する。

これが、施設入居後の関わり方の基本だと思っています。

高齢の親と笑顔で手を握り合うイラストと共に、「施設にお願いすることは介護を放棄することではない。物理的なケアを専門職に任せることで、本来の家族の役割である『親の心を支え、笑顔で向き合う』に戻ることができる」と書かれたスライド。

施設に入れることは、見捨てることじゃない

親を施設に入れるとき、申し訳なさを感じるのは自然なことです。私もそうでした。

でも、日本の介護保険制度は、介護を家族だけの負担にしないための社会制度です。施設や介護サービスを使うことは、家族の愛情が足りないからではありません。

むしろ、家族だけで抱え込みすぎると、介護者が倒れたり、事故を防げなかったりすることがあります。

施設入居は、介護を放棄することではなく、役割を分担することです。親の安全を守るため、必要な介護を受けさせるため、そして介護者自身が倒れないために施設を選ぶことは、逃げでも放棄でもありません。

「まだ早いかもしれない」と思う段階で相談を始めることが、結果的に親にも家族にも後悔の少ない選択につながります。

もし今、施設入所で悩んでいるなら、まず一人で抱え込まずにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。

二つの椅子とテーブルの相談窓口のイラストと共に、「今日できる第一歩:担当のケアマネジャー、またはお住まいの『地域公共包括支援センター』へ電話をかけること」と書かれた、相談を促すまとめのスライド。

※ご注意ください
この記事は、筆者自身の実体験と一般的な情報をもとに書いています。介護施設の種類・費用・入所条件、介護サービス、実家売却などは、時期・地域・本人の状態・家族構成・資産状況によって異なります。
実際に判断する際は、担当ケアマネジャー、担当医師、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口、不動産会社、司法書士などの専門機関にご確認ください。

この記事を書いた人

えいじ

58歳で早期退職し、両親の介護をきっかけに東京から福岡の実家へ戻りました。父母の看取り、単独相続、実家売却、マンション購入、フルリフォーム、失業手当受給、転職を経験。
このブログでは、元サラリーマンの実体験をもとに、50代後半からの人生整理を記録しています。

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